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「ラズッ……!」

「…来る、な…」

うめくように言ったラズルは、剣をつかみ直しオズマの足を切りつけた。

「ぐっ……」

切り裂かれた足から血が流れ、オズマが片ひざをつく。

剣を刺されたラズルの腹部からは血がとめどなくあふれていた。

「おい…どっちだと思う? あの金髪の方が優勢か?」

「いや…ドラキュラ伯爵は、あなどれんだろう、やはり」

「だが、いくら伯爵でも、あの出血では……ヴァンパイアには、命取りだ……」

興味本位の囁きが聞こえてくる。

「……やめて……」

やっと、それだけ言う。

私は耳を両手でおさえ、

「やめて……っ!」

叫んだ。

その頬をパンっとたたかれた。

「ルキア……逃げないで!」

レッドウィングスが私の頬をはさみ、声をあげた。

「見てっ……! あなたが目をそらしてる間にも……!」

私は、固くつぶっていた目をあけた。

 

 

血だまりに足をすべらせもがいていたオズマが、剣をつき出そうとしていた。

腹部からの出血がおびただしいラズルは、剣をかまえる気力すらもないように見えた。

「ラ…ラズル、ラズル、ラズル、剣がっ……!」

叫んだ私の目の前で、オズマの剣がラズルの首筋をとらえた。

噴き出した血に、彼の青銀の髪さえも赤く染まった。

「勝負は、ついたな……」

「ああ、伯爵の負けだ…」

口々に言い合い、取り巻いていた人垣がばらばらとほどけていく。

「そんな……こんなことって……こんなことってっ……!」

オズマは力を使い果たし、血の中に這いつくばっていた。

ラズルは……血にまみれて、動く様子もなかった……。

「ねぇ、レッドウィングス! 助け…助けられるよね? 今度も…今度も前みたいに、きっと! ねぇ!」

しがみついた私を、レッドウィングスは黙って見下ろした。

それから、そっと私の体を離して、ゆっくりと、首を横に振った。

「え……」

「出血の量が多すぎるわ……」

「うそ…だって、そんな…そんな、ねぇ、嘘でしょ!」

レッドウィングスの服のえりをつかんだ。

「いいえ……」

と、彼女は再び首を振った。

「……なぜ、止められなかったの。あなたをそのために、呼んだのに……」

「ごめん…なさい…だけど、だけど私…」

力が脱けレッドウィングスの体をすべり落ちた私の腕を彼女は抱え上げて、言った。

「仕方ないわ……終わったことを言っても。彼を、柩に葬ってあげましょう……」

「う…そ。いや…いやよ! そんなの…! ねぇ、助けられるって、言って! ねぇ、お願いだからっ! お願いだから……レッドウィングスッ!」

「聞き分けなさい…ルキア。彼は、死んだのよ…」

 

  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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