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それからのことは、思い出したくなかった。

瀕死で助かったオズマと、失血死してしまったラズル……私には、2人を止めることができなかった。

魔界では、ラズルの……ドラキュラ伯爵の葬儀が執り行われた。

柩に、彼の体が横たえられた時のことを、今もありありと思い出す。

私は、最後まで彼が目を覚ますだろうと思い込んでいた。

ドラキュラ伯爵とも呼ばれた彼が、そんな簡単に死んでしまうことなどあり得ないと、そう思っていた。

だけど、彼は目覚めなかった。

まるで眠っているかのようなあまりに美しいその面差しのまま、目だけをあけることは二度となかった。

柩が納骨堂におさめられても、私には信じることができなかった。

彼の柩に取りすがる私を、レッドウィングスが、

「もう、よしなさい…」

と、引き離した。

「……彼を、安らかに眠らせてあげて……」

と、言った。

 

もう、何も思い出したくない……。

あれから幾日もたつのに、彼は起きてはこない。

私をヴァンパイアに変えたラズルは、死んでしまった……。

私を置いて……。

瀕死のオズマも、ずっと眠り続けている……私には、何もない。

何も、残ってない……。

何も……。

 

ラズル……ラピスラズリのように綺麗だから、ラズル……

その蒼く美しい瞳が、あくことは永遠にない。

 

  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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