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「……あなたは、残酷な人だ……」

やっとそれだけ言って、伯爵を見た。

「……死の決断すらも、私にゆだねようとするなど……」

伯爵は見つめる私の視線をそらすこともなく、ただあまりに美しいその瞳で見返してきただけだった。

私は、鞘からすらりと剣を抜き、伯爵につきつけた。

それでも、伯爵は私を静かな眼差しで見つめたまま、身じろぎさえすることもなかった。

「……あなたを、殺します……」

そう告げてもなお、伯爵は何も言うことはなかった。

(ラミアのためにも……)

私は心を決め、目を閉じて、伯爵を刺そうとした。

剣をつかみ直し、伯爵にまっすぐに向けた。

殺すつもりだった。

だが、私には、刺せなかった。

抵抗をすることもなく、黙って殺されるのを待っているような人を刺せるはずもなかった。

私は剣を下ろし、

「剣を、取ってください…伯爵」

と、促した。

伯爵が無言でうなづいて、自分の剣を取った。

「ドラキュラ伯爵、あなたに決闘を申し出ます……勝敗は決着がつくまで、どちらか一方が倒れるまで加減なしで行います……」

決闘のルールを話した私に、

「わかった……」

と、だけ伯爵は応えた。

私たちは城の外へ出ると、剣をかまえて互いに見つめ合った――。

 

 

……いくら泣いても泣いても、気がおさまることはなかった。

2人のことを考えれば考えるほど、悪い方にばかり想像は働いた。

(もう、オズマがラズルを刺してしまっているかもしれない……どうしよう……もしそんなことになっていたら、私のせい……私が、あんなことを話したから……だから……。どうしよう……どうしよう……私のせいで、2人がどうかなるようなことがあったら……)

私には、どうしていいのかわからなかった。

魔界に行けない自分が歯がゆくて、苦しくて、いてもたってもいられない気もちだった。

胸の中でふくれ上がる不安に気が狂わんばかりになって、今にも叫び出しそうになって、ようやく頭を抱え思いとどまっていた私に、

「ルキア……」

と、呼ぶ声が聞こえた。

うずくまっていた私は、顔を上げた。

「あ……」

窓辺に来ていたその人は、赤い翼を折りたたむと、中へと入ってきた。

「レッドウィングス……なぜ……」

たずねた私に、

「魔界に来て……彼を、助けて……ルキア」

と、彼女は告げた。

 

  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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