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「そう…ラミアだ……彼女だったんだ……私を愛していた彼女は、魔女になることを願い、別のものと結婚を決めた私を魔獣に変えたのだ……」
「そん…な……」
「……彼女に、罪はない……彼女は、私を愛しただけだ……。……私は、その彼女を魔女に変えたものが、憎い……誰も、彼女に魔力など与えなければ……こんな哀しいことになど……」
オズマが言って、自分の手をじっと見つめた。
「哀しいことって……」
「……殺したんだ、私が……」
オズマは眺めていた手のひらを顔に押しつけ、声にならない、嗚咽をもらした。
「オズマ……」
震えるオズマの体に腕をまわして抱きしめた。
「……ルキ、ア……知らないか……ラミアを、魔女に変えたものを……」
「魔女に、変えたもの……」
……一度だけ雨宿りに出逢った少女……狩りの途中で立ち寄った男……その男は別のものと結婚を決めて……
あっ……と、思った。
「何か……知っているのか、ルキア」
オズマが私の肩をぎゅっとつかむ。
「待って……だって、そんな……」
「何か知っているのなら、教えてほしい! ルキア!」
肩をつかむオズマの手に力がこもる。
「ちがう……そんなわけない。ラズルが……そのひとを魔女に変えただなんて……」
「なん…だって……ラズル……伯爵が……あの伯爵が、魔力を与えたというのか!」
「ちがう……ちがう! そんなわけない! ちがうわ! ラズルが……そんな……っ!」
泣きながら訴える。
「……だが、ルキア……何か、根拠があるのだろう? おまえが、そう思うわけが……」
オズマがこぼれる涙を指でぬぐいながら、言う。
「わからない……そんなこと、信じたくはないもの……」
「なら……」
と、オズマが口にした。
その言葉にとても強い意志のようなものを感じて、私は顔を上げた。
「……伯爵本人に、確かめるまで……」
「だめ……」
私は、オズマの手をあわてて握った。
その手を振りほどき、
「真実でないのなら……いいのだろう?」
と、オズマが私を安心させるかのように笑い顔をつくって見せる。
「いや……行かないで」
行かせては、いけない気がする。
行かせてしまったら、取り返しのつかないことになる予感がする。
「お願い……オズマ、行かないで……」
私は、もう一度頼んだ。
「……行く」
オズマはひとこと言い、寝台から抜け出た。
「オズマ…ねぇ、待って! お願い!」
泣く私の頭をオズマはなでて、
「ルキア……確かめなくては、ならないんだ……」
と、小さく微笑った。
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