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「ラミア…?」

「うん……」と、応えるようにオズマが寝返りを打って顔を向ける。

「ラミアって、誰…?」

オズマは深く寝ついてるようで、目を覚ます気配はなかった。

私は汚れたオズマの髪をタオルでていねいにふき、毛布を胸まで引くと、何か食事をと思いキッチンに立った。

「あたたかいスープがいいかな…」

私が食事をつくることなんてめったにない。前につくったのは、まだオズマがここにいた頃のことかもしれない……そう思ったら、ふっと口から笑いがもれた。

いっしょに食事をして、昔話を語り合って……そんなオズマとの時間が、私はとても好きだった。

決して、ラズルが嫌いなわけじゃない……だけど、彼とは食事の時間は持てなかった、人間だった頃の思い出を共有することはできなかった……。

「私…何を考えて……」

ぐつぐつと鍋の中身が煮えたって、湯気をたてていた。

「オズマ…もう、起きたかな…」

火を止め、寝室へ行く。

中をのぞき込み、「オズマ…」と、声をかけてみる。

彼は、まだ起きてはいないようだった。

寝台に近づいて、「オズマ…」と、もう一度呼ぶ。

と、「うん…」と、小さな声が返ってきた。

「…起きてるの? オズマ?」

「あ…ルキアか…ん、今起きた…」

彼が寝台から半身を起こそうとする。

「だめ…無理しないで」

彼の体を支え、腰にクッション代わりの枕を置いてそっと横たえる。

「すまない…だいぶ眠っていたらしいな…」

「ううん、気にしないで。それより、オズマ…スープを飲む? 今あたためてくるけど…」

「スープか…ありがとう、もらおう…ルキアの料理は、久しぶりだな…」

オズマが笑顔をつくる。

やさしげで、穏やかな表情……胸の奥が、かすかに鳴った。

 

 

あたためたスープをスプーンにすくい、オズマの口元に差し出した。

「ルキア…ひとりでも、飲めるから…」

恥ずかしそうに、オズマが言う。

「いいの、飲ませてあげる。ね…はい、口をあけて?」

オズマが小さく口をあける。

スープを一口飲むと、オズマは「おいしいな…」と、微笑んだ。

「そんな…顔、しないで…」

目に涙がじわりと浮かんだ。

「どうした…なぜ泣く?」

オズマの手が頬にやわらかく触れた。その手に自分の手をそっと重ねた。

「だって……ひとりは、さびしい。そんな顔されると、なんだかそれだけでも幸せな気がして……だめね、簡単に泣くなんて……」

「そう…か…」

オズマは呟いて、かすかに眉間にしわを寄せた。

つまらないことを言ってオズマを困らせたかもしれないと思う。

「ごめん…なさい…」

謝ると、オズマは「あ…いや、ちがう…ルキア」と、首を振った。

「ちがう……別のことを、思い出していた……」

「別の、こと…?」

「そう…別の…ラミアのことを…」

「ラミア……」

再び、私の胸は小さく疼いた。

 

  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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