ブルーヴァンパイア\「銀の月と、金の太陽のカノン」
-1-
足元が、ふらつく。
体がだるく、鉛のように重い。
私はようやく脱け出た森から、足を引きずるようにしてもう長いこと歩き続けている。
どこか遠くへ、少しでも遠くへたどり着きたかった……。
ひと足ごとに、体は重くなる。意識も次第にもうろうとして、目の前すらも薄ぼやけてくる。
「ここ…は、どこ…だ…」
つき出していた木の根に足を取られころびそうになって、私はぼんやりとあたりを眺めた。
「あ…あれ、は…」
ぼやけた視界の先に、見たことのある古びた館があった。
「まさか…あれは…」
私は力を振りしぼるようにして、館へと歩いた。
錆びついた鉄柵の門に手をかける、ギギギィーッときしんだ音がして門がひらくと、私はそのまま門に引きずられるように、館の中庭に倒れ込んだ――。
門のきしむ音に続いて、何かがどさりと倒れるような音がして、私ははっと顔を上げた。
館の外へあわてて飛び出してみる。
と、そこには、今の今まで会いたいと想いをはせていたその人……オズマがいた。
「オズマ……」
なつかしい名前を呼んで近寄り、顔をのぞき込んだ。
「ルキ…ア…」
オズマがわずかに顔を上げて、私をじっと見つめた。
「……やはり、ここは、おまえの館だったのか…よかった、ルキア…また、おまえに会うことができて……」
オズマが力なく手を伸ばす、その手を両手で包みそっと握りしめた。
「どうしたの、オズマ…こんなに弱っているなんて…何か、あったの?」
オズマは答えずに、無言で首を振り、
「ルキア…少し、休ませてくれないか…少しで、いいんだ…私は、疲れた…」
と、消え入りそうな声で話して、そのまま気を失ってしまった。
腕を取り肩にかけて、私はオズマの体を寝室まで運んだ。寝台にようやく横たえて、毛布を引こうとして気づいた。
オズマの体には無数の小さな傷あとが付いていた。
「枝かなんかで、引っかいたみたい…何が、あったのかな…」
額にはうっすらと土がこびりつき、髪はわずかに濡れそぼっていた。
濡らしたタオルで生えぎわをふいてあげる……と、オズマがわずかに身じろいで、
「ラミ…ア…」
と、呟いた。
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