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「レッドウィングス様、ファントム様がお見えです」
ノックとともに入ってきた妖魔が告げた。
「……こちらへお通ししてもよろしいでしょうか?」
「ええ…いいわ…。ブルーアイズ、いいかしら…?」
「ああ…奴に会うのはもう何年ぶりだろう…」
ブルーアイズが呟いた。
「よう! レッドウィングス!」
ブルーアイズの低い声にかぶさる大声とともに、扉をあけ放って大きな薔薇の花束を抱いた男が入ってきた。
「…と、先客がいるのか? おっ…おまえは、ブルーアイズか?」
「ああ…邪魔をしている…ファントム…」
「思わぬ奴に会ったな…レッドウィングス、まさか俺へのあてつけか?」
男はレッドウィングスを振り返り、微笑みを浮かべると、持ってきた花束を差し出した。
「そんなわけがないでしょう? ファントム…薔薇をありがとう」
深くスレッドの入った真紅のドレスに身を包んだレッドウィングスが薔薇の花束を抱えると、よく似合ってとても美しかった。
「あいかわらず、美しいな…レッドウィングス」
「そう? あなたもあいかわらず口がうまいのね…」
銀色の髪のファントムと呼ばれた男はひざまづくと、レッドウィングスの手を取って甲にそっと口づけた。
「……時に」
と、ファントムがブルーアイズに声をかけた。
上の空でワイングラスをもてあそんでいたブルーアイズが「え…」と、かすかに仰のく。
「なぜ、ここにいる?」
テーブルに着いたファントムがブルーアイズの手からグラスを抜き取り、目の前で一息に飲み干す。
「…私が、いてほしいって言ったの」
横からレッドウィングスが口をはさむ。
「……なぜ? この俺が来るのがわかっていて……?」
「いけないかしら? 晩餐は人が多い方が楽しいでしょ?」
レッドウィングスに言われ、ファントムが言葉につまる。
「あなたにもワインをついであげるわ。3人で乾杯をしましょ?」
レッドウィングスがグラスについだワインをファントムが眉をひそめて見る。
「…この3人で、何に乾杯などすると言うんだ…」
「再会に…」
「ふん…子どもだましだな…」
ファントムはグラスを合わせると、また一息に中身を飲み干した。
「……ところでブルーアイズ、おまえはレッドウィングスを愛しているのか?」
ファントムのふいの質問に、さっきの自分の言動を思い出したレッドウィングスが「そんなこと、今聞かなくてもいいでしょう…」と、口をひらく。
「いや…俺は今聞きたいんだ。ブルーアイズ…どうなんだ? おまえは人間の小娘ともつき合っているという噂だが…」
「…………」
「答えろ……」
「答えられない……」
「貴様…っ!」
ファントムがブルーアイズの襟首をつかみ上げる。
「よして、ファントム。私の部屋で無礼は許さないわ」
レッドウィングスに間に入られ、ファントムは舌打ちをしてブルーアイズの服を離した。
「……俺は、おまえのそのお綺麗な顔が気に入らない……おまえはとりすましたその顔で、何もかもを曖昧に済ませようとする……」
「口がすぎるわ…ファントム…」
「かまうな、レッドウィングス…なんとか言ってみるがいい、ブルーアイズ」
「……ファントム、私はルキアといると、安らぎを覚える……」
ブルーアイズが顔を上げてファントムをじっと見つめる。
「……安らぎ、ね。愛情と言い切らないところが、おまえのやさしさか…? たいした偽善ぶりだな…」
「私に、そんなつもりはない……」
目をそらしたブルーアイズのあごをつかんで自分に向けさせると、
「ならば、言ってみるがいい! レッドウィングスを愛していると! 俺は言える! 彼女を愛していると!」
叫んだ。
「よして! ファントム! もうやめて!」
「どけ! レッドウィングス! 俺は、おまえが許せんっ! 外へ出ろ! ブルーアイズ!」
ファントムはブルーアイズの腕をつかむと窓から飛び降りた。
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