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「ブルーアイズ…あの子と、私と……」
レッドウィングスが胸から少しだけ顔を上げたずねた。
「……その質問には、答えられない」
ブルーアイズが体を離し、顔をうつむける。
「どうして? どうして私じゃ……!」
ブルーアイズが声をあげかけるレッドウィングスを抱きしめる。
「…レッドウィングス…今夜はどうかしている…少し落ち着いた方がいい…」
「落ち着いてるわ……ずっと。もうずっと前から……落ち着いてるに決まってるじゃない……」
涙が新たにあふれてきてレッドウィングスは頬に手をあてた。
「レッドウィングス…今宵のおまえは儚いな…」
「雪のせいよ…それに少しワインも飲みすぎたかもしれないわ…あなたがいつまでも相手にしてくれないから…」
「ふっ…」と、微笑を浮かべたブルーアイズが、ふいにまたレッドウィングスを抱き寄せた。
「ブルーアイズ…新しいワインを…」
腕から逃れようとするレッドウィングスを見つめ、
「しっ…」
と、ブルーアイズが唇に指をあてた。
「…誰かが、のぞいているらしい…」
「えっ? のぞいて…?」
思わず声をあげたレッドウィングスに、「ふふ…」と、笑い声が聞こえた。
「その声……」
部屋を見まわしたレッドウィングスのそばへひらひらと蝶が飛んできたかと思うと、ふいに人型をつくった。
「覚えていてくれて光栄だわ、レッドウィングス」
「…何しに来たの…ブラッディーローズ…」
「…匂いがしたわ…悪夢を呼び覚ます匂い…」
と、ブラッディーローズが微笑を浮かべる。
「いい趣味ね…のぞき見るなんて」
「…それが、私のやり方だもの」
と、ブラッディーローズがにらむレッドウィングスを見つめ返す。
「もう帰って…あなたに邪魔はさせないわ」
「ふふ…」と、ブラッディーローズが笑う。
「ちがうわ……今日は、リベンジに来たの。おあつらえ向きにブルーアイズ様もいるし…ね?」
ブラッディーローズがブルーアイズに片目を閉じて見せる。
「帰りなさいと言ってるのよ…ブルーアイズに二度と手出しはさせないわ…」
「ふん…」と、ブラッディーローズが鼻先で笑う。
「もったいないわね…。ここで手柄をたてておけば、こないだの失策も帳消しにできるのに…。それとも、そんなにブルーアイズ様がお好きなのかしら? でもこうして見ると、ブルーアイズ様って本当にきれい…。あなたが本気になるのも無理ないかしらね…」
再びふふっ…と笑うブラッディーローズに、「帰って…四度目はないわ」と、レッドウィングスが低く言う。
「恐い顔…だけど、そんなに好きなのに報われないなんて…かわいそうね…」
レッドウィングスがパンッとブラッディーローズの頬を打った。
「二度と私の前に現われないで…」
「よくも…二度と現われる気もないわ」
羽をひらき窓から行きかけたブラッディーローズが、ふと振り返った。
「…報われないブルーアイズ様より、あの方にすればいいのに…」
「彼の話なんて聞きたくもないわ…」
「そ…でも、ブルーアイズ様がお相手じゃあの方も勝ち目が薄いわね…あそこに、来てるみたいだけど…」
わざとらしく言うとブラッディーローズは蝶に変わり、窓辺から飛び立っていった。
「えっ…来てる…?」
レッドウィングスが半信半疑ながら、窓の下をのぞき込む。
雪の中を薔薇の花束を手に歩いてくる男がいた。
「ほんと…に」
と、レッドウィングスが口をつぐむ。
「どうした…誰か来たのなら、私はもう帰った方が……」
「いや…帰らないで。彼は苦手…いて、ブルーアイズここに」
レッドウィングスがブルーアイズの上衣を握りしめる。
「私はかまわないが……」
「そこでワインでも飲んでいて…」
浮かない顔のブルーアイズにレッドウィングスはワインをつぎ足し、テーブルセットに座らせた。
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