ブルーヴァンパイア[「宵月夜のシンフォニー」
「このお話を、4500をゲットしていただいたSHEMHAZAさまへ捧げます」
-1-
魔界では珍しい雪がいつにない積雪を見せ、黒いばかりの世界を白く染め上げた。
「…ねぇ、ブルーアイズ、魔術書がそんなにおもしろいの…」
傍らでワインを飲んでいたレッドウィングスにふいにそう聞かれ、ブルーアイズは「ん…?」と、瞳を上げた。
「…雪が、だいぶ積もったみたいだわ…いつまでそうしているの…?」
「すまない…最近魔術に興味があって、つい読みふけってしまった…私にも、ワインをついでくれないか?」
レッドウィングスが差し出されたグラスにワインを注ぎ入れる。
「雪…きれいね」
と、レッドウィングスが窓辺に立つ。
「ああ…魔界に雪など久しぶりだな…」
グラスを手に窓際に立ったブルーアイズが、壁に背中をもたせかける。
「ねぇ…ブルーアイズ、あなた……あの娘とまだ……」
レッドウィングスがしゃべり終わらない内に、ブルーアイズが眉間にかすかにしわを寄せる。
「あの娘…ルキアのことか…彼女が、どうかしたのか?」
刺すような蒼い瞳に射すくめられて、レッドウィングスが先を話すべきか一瞬とまどう。
「……人間とつき合うなんて、あなたも先代の伯爵と同じなのね……」
「つまらないことを……」
気にかける風もなくブルーアイズがワインを口にする。
「でも、ブルーアイズ、このままじゃあなたも伯爵と同じ運命……」
「言うな…っ、それ以上…!」
声とともに平手が飛んできてレッドウィングスはたたかれるかと目をつぶった。だがブルーアイズの手は彼女の頬をたたかず、そっと触れただけだった。
「…もう、そんな話はしないでほしい…」
瞳を伏せたブルーアイズの手に、レッドウィングスが手を重ねる。
「ごめんなさい…だけど、だけどブルーアイズ…あの子のことを本当に愛……」
「そんなことを聞いてどうする…」
と、ブルーアイズが言葉を遮る。
「だって私、あなたがまたあんな目に合うのを見ていられない…。あの子といる限り、あなたはまたきっと無茶なことを……」
レッドウィングスのアイスブルーの瞳から涙がこぼれた。
「…私のためになど泣くな…。どうした…レッドウィングス、今日はいつものおまえらしくないな…」
ブルーアイズの指に涙をすくわれると、レッドウィングスはその胸に顔をうずめた。
「……雪の日は、嫌い。静かすぎて……」
「そうか…なら、しばらくこうしているといい…」
ブルーアイズの腕がレッドウィングスをそっと抱きしめる。
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