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 蝋燭の灯る木のテーブルの上にささやかな食事が並べられた。(ルキアと暮らしていた頃にそっくりだ…)そう思って、私はふいにおかしくなった。私はさっきから何もかもをルキアに結びつけようとしていた。

「何が、おかしいのですか?」

ククッと笑いを押し殺したのを少女に見つかった。

「いや…。君を見ていると…無性にある人のことを思い出して…な」

「ある…人? …と、言われますと…?」

そう聞き返した少女の瞳が、一瞬、妖しげに煌いたように思えた。

「ああ…いや、かつて出会ったことのある少女のことだ…たいしたことではない…」

私は、そうなにげなく話をはぐらかそうとした。

すると、

「少女の名前はなんと言うのです……!」

目の前の少女がふいに大声をあげた。今にもつかみかからんばかりの勢いだった。

私はふいの少女の言動に驚き、次に答えるべき言葉を失った。

少女は、そんな私に気づいたのかもしれない……急にまたとまどったような表情を見せて、「……すいません……このようなところにひとりでいると、人恋しくて……つい、つっ込んだことをお聞きしてしまいました……」と、謝った。

「いや…いい。私も、女性の前で、他の人のことを思うなど……」

私は、そこまで言いかけて、あることを思い出した。

「そう言えば……私はまだ君の名前をうかがってはいなかった。私はオズマというが、君は……」

少女の名前も聞かず、ルキアのことばかりを思っているなど、私は今さら自分の無礼さに気恥ずかしくなった。

「私は……ラミア……」

「ラミア…?」

「ええ……」

「ラミアか…いい名だな」

私は、これ以上少女を傷つけぬよう、あたりさわりのない答え方をした。

「ありがとうございます……オズマ様」

少女が微笑んで、うっすらと頬を赤らめた。

 

 

食事を済ますと、私はにわかに眠くなった。けだるい疲労感に身をまかせるままにソファーに深く腰をうずめた。

「…そろそろ、寝台にご案内致しましょうか」

「ああ…そうしてもらえるだろうか」

先を行くラミアの燭台の灯りを頼りに廊下を進む……それにしても、ここはなぜこんなに暗い……にわかに不思議に感じた時、ラミアの足がぴたりと止まった。

「オズマ様、どうぞこちらのお部屋でおやすみください…」

「すまない…」

部屋に入り寝台に体を横たえると、ラミアが持ってきた燭台の灯りをふっ…と吹き消した。

「それでは、ごゆっくり…」

「ああ、ありがとう…」

ラミアが置いていった毛布を胸のあたりまで引き上げると、私は何度か感じていた疑問もすぐに忘れて寝入ってしまった……。

 

  

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