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ベリアルが行ってしまうと、ルシフェルは拳でもう一度机をたたき、読んでいた書物を力まかせに閉じた。

続きを読む気などなくしたとばかりに大股で書庫から出ていくルシフェルの姿を、書庫にいた天使たちが卑敬と羨望の眼差しで見送る。

「くっ……気分が悪い……」

自分にまとわりついているそんな視線に気づくはずもなく、ルシフェルは唇を噛みしめて、書庫を出るとすぐ正面にある噴水のへりにどさりと腰を下ろした。

「……私がミカエルと兄弟だなどと……そのようなことが、あるわけもないだろうが……」

ぶつぶつと口にするルシフェルの脳裏に、「真実は、神のみぞ知る……」というベリアルの言葉がよぎる。

「神が、何を知っておられると言うのだ……ベリアルめ、忌々しい……」

こびりつくように頭から離れない話に、ルシフェルは頭を振り、ひざの上で手を固く握りしめた。

 

 

聴こえる噴水の水音さえわずらわしく思いかけたルシフェルの耳に、どこからか弦を爪弾くような音が響いた。

目を上げたルシフェルにリュートを弾きながら近づいてくるミカエルの姿が映った。

「……どうした? ルシフェル……」

リュートを抱えたミカエルがやって来て、ルシフェルの傍らに座る。

「そのように浮かない顔をして……私が、リュートでも弾こうか?」

弦をはじき調律をするミカエルに、「ああ…でも、今はいい…」と、ルシフェルは断った。

「そのような気分にならない……すまない、ミカエル……」

ため息を吐いて言うルシフェルに、「何があった…? おまえらしくもない…」と、ミカエルが首を傾げる。

「いや……なんでもない……」

言いながらルシフェルは、ミカエルの顔をじっと見つめた。

(似ているだろうか……そんなに天界でも知られた話なのか……私とミカエルが似ているということは……)

ミカエルのパーツのひとつひとつを見ながら、自分との共通点を探し出そうとしているルシフェルに、「…何を、見ている?」と、ミカエルが不思議そうに聞き返す。

「あ……なんでもない……」

ルシフェルが、あわてて目をそらす。

「……ルシフェル、何か隠しているだろう? さっきから、『なんでもない』ばかりだ……私に、話せないことが何かあるのか?」

「いや…」と、ルシフェルが首を横に振る。

「ただ……おまえと、私は似ているのかと思って……」

ぼそぼそと口にするルシフェルに、「私とおまえがか?」と、ミカエルがますます怪訝そうな顔をする。

「や…そんな噂を聞いたんで…それだけだ…」

話を終わらせようとしたルシフェルに、「そんな噂とは、どんな噂だ?」と、ミカエルがたずねた。

 

   

 

 

 

 

 

 

 

 

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