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蘇生して初めて魔界を脱け出したブルーアイズは、ルキアの館のある懐かしい人間界を訪れた。
魂が体から離れている間に多少の記憶を失ってはいたが、館の場所はブルーアイズの記憶の中に残っていて、たどり着くのに迷うことはなかった。
古ぼけた洋館の、かすかに蝋燭の明かりが灯る窓辺に近づく。
中に彼女の影を確かめると、ブルーアイズは窓の外へ舞い降りた。
「ルキア……」と、後ろ姿の彼女に呼びかける。
振り向いたルキアは、ブルーアイズの姿に気づくと、「あっ……!」と声をあげ、持っていた皿を落とした。皿が音をたてて砕け散り、入っていたスープの中身が床にぶちまけられる。
「ルキア……大丈夫か?」
声をかけたブルーアイズに、ルキアが恐る恐る近寄る。
「本当に……ラズルなの……」
「ああ、ルキア……」
ブルーアイズが差し出した手を取り、ルキアが頬に押しあてる。
「もう……二度と会えないと思ってた……ラズル……」
涙をこぼすルキアの肩を抱いて、ブルーアイズは「父が…私を生かしてくれた……私は、まだ生きていていいらしい……」と、話した。
「お父様が、命を……?」
ルキアの問いに、ブルーアイズが「ああ……」と、うなづいた時だった。
「ルキア! 何かあったのか? 今、大きな物音がしたが……!」
キッチンに駆け込んできた男は、ブルーアイズの姿に驚きその場に立ちすくんだ。
「オズマ……いっしょに住んでいるのか……」
ブルーアイズがオズマに顔を向けたずねる。
「ごめんなさい…ラズル…だって、あなたは、もう、還らないとおもったから…だから……」
ルキアがブルーアイズから体を離して言う。
「なぜ、おまえが謝る……」
泣きながら後ずさるルキアを後ろへ押しやり、オズマがブルーアイズの目の前に立った。
「あなたは……本当に、伯爵なのですか……」
オズマがブルーアイズをじっと見据えて、言う。
「なぜ、そんなことを聞く……。私が、私以外の誰だと言うのだ……」
自分を見つめる蒼く澄んだ眼差しに、オズマが「……今度こそ、生き返られたのですか?」と、もう一度聞く。
「今度こそ……? ああ……父が私に魂をくれたのだ……」
「そう…ですか……お父上が……それでは貴方は本当に、伯爵なのですね……」
オズマはじっと探るように、ブルーアイズの顔を見た。
「ああ……話が、よく読めないが……」
ぶしつけな態度にすら怒ることもなく、もの静かなたたずまいを崩さない目の前の男は伯爵にちがいないとオズマは確信した。
困惑するブルーアイズの前にひざをつき、「ご無礼を、お許しください……」と、オズマが手の甲に口づける。
それからすっと顔を上げてブルーアイズをまっすぐに見つめると、
「私は……今、ルキアと暮らしています……」
と、オズマは告げた。
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