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「大丈夫だ! 絶対、俺が助けてやるっ!」

ファントムが渾身の力で、レッドウィングスの手を引っぱる。

「うんっ! 痛…いっ!」

「我慢しろ! もう少しだ!」

つかんだ腕を肩にかつぐようにしてぐっと力を込める。だが引き込む力は衰えず、今やレッドウィングスの顔までが埋まろうとしていた。

「くそっ…だめだ…!」

ファントム・ウルフは吐き捨て、つかんでいた手を離すと、いきなり自分の腕に噛みついた。

鋭い牙に貫かれ血しぶきが飛び散る。

「何してるの! ファントム!」

やけを起こして暴挙に出たのかと思うレッドウィングスに、

「ちがうっ…血がいるんだ!」

ファントム・ウルフが叫ぶ。

「血…?」

「そう…血だ。そいつは、血を求めている…いいか、この血と引き換えに、今おまえを助けてやるっ!」

ファントム・ウルフが血まみれの腕を差し出すと、魔術書は異次元の口をひらき手首を呑み込んだ。

すかさず一方の手をレッドウィングスの腰にまわして引き寄せると、嘘のようにあっさりと体が脱けた。レッドウィングスを抱きしめるかっこうで、ファントム・ウルフは剣を抜くと呑まれた手を切り落とした。

「ファントムっ……!」

悲鳴をあげるレッドウィングスに、「大丈夫だ…」と、ファントム・ウルフが笑顔をつくる。

「……すぐに生えてくる。心配することはない……」

ファントム・ウルフの手首を呑んだ魔術書は、いったん発光を失い浮かんでいた空中から下へ落ちかけた。

「……おさまったか……」

ファントム・ウルフが呟いた。

と、同時に、魔術書は再びふわりと浮き上がり、頁を勝手に繰り始めた。

「なんだ…まだ、血が足りないとでも…」

レッドウィングスを背後に押しやり守るようにしながらファントム・ウルフが魔術書に近寄る。

すると、どこかから、

「……よ、く…ぞ……」

地を這うような声が響いた。

「誰だ…」

警戒を露にするファントム・ウルフに、

「よくぞ、この身を目覚めさせた……」

声は、魔術書から聞こえている。そう気づいた矢先、魔術書からしゅうしゅうと音をたてて煙が立ちのぼった。

 

  

 

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