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街はずれの湖まで逃げて、私は水面に顔を映した。

衝撃は、あの時と同じように体中を走り抜けた。

耐えられない……こんな思いを、再びするなど……私は顔を覆い、声を殺して泣いた。

 

「……どうだ? 人ひとり、殺した感想は?」

「誰だっ!」

「俺は、ヴァンパイアのグレイだ……、いい夢が見れたか?」

木の幹にもたれて、グレイがうすら笑う。

「…悪夢を紡いだのは、僕だよ。どう? よくできてたでしょ?」

その後ろで木の枝に腰をかけたインキュバスが、くすくすと笑っている。

「貴様……貴様らが、このような悪夢を……!」

つかみかかるオズマをグレイはすっとかわして、

「おっと……その悪夢、まだ覚めちゃいない……。見てみろ、そこを……」

と、横をあごでしゃくった。

そこには、ルキアが立っていた。

「ル…キ、ア…」

救いを見つけたように呟いたオズマに、ルキアは言った。

「…人殺し…」

オズマが言葉を失い、絶句する。

「人殺し……2人も、殺すなんて……」

「ふた、り…?」

ラミアの死さえ受け止め切れてはいないオズマが、呆然と聞き返す。

「そうよ、2人! ラミアと! そして、ラズル…!」

 

 

「…ラ…ズル…? …伯爵のことか? 伯爵が、死んだと言うのか?」

ブルーアイズの死を初めて知ったオズマが、ルキアの肩を思い余ってわしづかむ。

その手を払いのけて、悪夢に操られているルキアは声をあげた。

「……触らないで!」

反射的に手を離したオズマが、地面に座り込む。

「ふっ…くく、もっと、言ってやるがいい…さぁ、ルキア…どれほど、こいつが憎いかを…」

グレイに促されて、ルキアがいっそう感情を高ぶらせる。

「……返して! ラズルを! ねぇ…返して!」

力なく座り込んだままのオズマに、ルキアが取りすがる。

「…ルキア…憎いか…そいつが、そんなにも…」

グレイが、あおり立てるようにたずねる。

「憎い…憎い! ラズルを殺したオズマが…!」

「ならば…」

と、グレイはルキアの耳元に囁きかけた。

「…そいつの血を吸い尽くして、殺してやるがいい…」

 

  

 

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