-7-
街はずれの湖まで逃げて、私は水面に顔を映した。
衝撃は、あの時と同じように体中を走り抜けた。
耐えられない……こんな思いを、再びするなど……私は顔を覆い、声を殺して泣いた。
「……どうだ? 人ひとり、殺した感想は?」
「誰だっ!」
「俺は、ヴァンパイアのグレイだ……、いい夢が見れたか?」
木の幹にもたれて、グレイがうすら笑う。
「…悪夢を紡いだのは、僕だよ。どう? よくできてたでしょ?」
その後ろで木の枝に腰をかけたインキュバスが、くすくすと笑っている。
「貴様……貴様らが、このような悪夢を……!」
つかみかかるオズマをグレイはすっとかわして、
「おっと……その悪夢、まだ覚めちゃいない……。見てみろ、そこを……」
と、横をあごでしゃくった。
そこには、ルキアが立っていた。
「ル…キ、ア…」
救いを見つけたように呟いたオズマに、ルキアは言った。
「…人殺し…」
オズマが言葉を失い、絶句する。
「人殺し……2人も、殺すなんて……」
「ふた、り…?」
ラミアの死さえ受け止め切れてはいないオズマが、呆然と聞き返す。
「そうよ、2人! ラミアと! そして、ラズル…!」
「…ラ…ズル…? …伯爵のことか? 伯爵が、死んだと言うのか?」
ブルーアイズの死を初めて知ったオズマが、ルキアの肩を思い余ってわしづかむ。
その手を払いのけて、悪夢に操られているルキアは声をあげた。
「……触らないで!」
反射的に手を離したオズマが、地面に座り込む。
「ふっ…くく、もっと、言ってやるがいい…さぁ、ルキア…どれほど、こいつが憎いかを…」
グレイに促されて、ルキアがいっそう感情を高ぶらせる。
「……返して! ラズルを! ねぇ…返して!」
力なく座り込んだままのオズマに、ルキアが取りすがる。
「…ルキア…憎いか…そいつが、そんなにも…」
グレイが、あおり立てるようにたずねる。
「憎い…憎い! ラズルを殺したオズマが…!」
「ならば…」
と、グレイはルキアの耳元に囁きかけた。
「…そいつの血を吸い尽くして、殺してやるがいい…」
SEO | [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送 | ||