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「…明日には、第一王子のオズマ様が王位を継ぐようだな…」
「ああ…どう思う? 王子は、現王を超えられると思うか?」
それは、病に伏せる父王の寝室へと急ぐ私の耳に、偶然飛び込んだ会話だった。
「さぁ…な。しかし現王は偉大だ…あの御方を簡単に超えられるなど…」
話に、小さな嘲笑が混じる。
「まぁ…王子の御力は未知数だが…現王の後では並大抵では、な…」
笑い合う兵士たちの声が聞こえる。
聞いていた私は、思わず唇を噛みしめた。
「父王の後では……」
王位を継ぐことになった時から、頭の隅にいつもあった言葉だった。
(私は、名君と言われた父を超えられるだろうか…)
ふいにつきつけられた兵士たちの本音に、私は胸をわしづかまれた思いがしていた……。
即位の儀は滞りなく進んだ。集まった民衆からは祝福の声があがり、私はそれに応えて、国の一層の繁栄を約束し、現王に至らない点は力を貸してほしいと、民とともに歩む姿勢を訴えた。
たとえ父には及ばずとも、私は私なりのやり方でやっていけばいい……それは、思い悩んだ末に出したひとつの結論でもあった。
「…ねぇ、オズマ様もとうとう国王になられたわね…」
侍女たちが大声で話をしているのが聞こえる。即位を終えた私は、そんな声すらも心地よく、その場を通りすぎようとしていた。
「ええ。前王もお素敵だったけれど、なにしろお年を召していられたしねぇ…」
「そうそう。それにくらべれば本当にお若くて、お美しい方…国のお飾りとしては、最高よね…」
侍女たちが声をあげて、笑っている。
「ええ…お飾りと思えば、前王に劣ったとしてもあまり気にもならないし…」
「お飾り……」耳の奥を耳鳴りが襲う。よもや、侍女たちにまでそのように思われていたなど……私は、脱力する思いで壁にもたれかかった。
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