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「そ…う、か。奴にそんな過去が……」
「ええ…バカなひと…過去のたった一度のことが許せなかっただなんて…」
「バカなか…おまえ、ずいぶんと言うようになったんだな…」
グレイが口の端に笑いを浮かべる。
「……だって、あの人は死のうとしてたようにしか……」
「ああ…。それは……他のところでも言われている……奴は、最初から死ぬつもりだったんだろうと……だが」
と、グレイはレッドウィングスにつと視線を走らせた。
「……助けることができたはずだ、おまえなら……」
「私なら…ね」
と、レッドウィングスが言葉を返す。
「……元人間のあの娘にはできなくても、できたかもしれないわね、私には……」
「そうだ……それに、相手のオズマとかいう奴も、マスターもいない半妖のはず……おまえの魔力を持ってすれば、止められないことなど……」
そこまで言って、グレイは口をつぐんだ。
「……まさか、おまえ……」
グレイが灰色の目を細め、レッドウィングスをにらんだ。
「……まさか、なに……」
レッドウィングスが下級妖魔ならすくみ上がる程のその眼差しを、動じずに受け止める。
「……おまえ、みすみす奴を見殺しにしたんじゃ……」
「……見殺し……。人聞きが悪いわね……」
レッドウィングスが伸びた髪をかき上げ、上目づかいにグレイを見つめる。
「ちがうのか……どうなんだ……」
グレイの声がすごむように、にわかに低くなる。
「見殺しになんかしたつもりはないわ、だけど……」
と、レッドウィングスが口にする。グレイがごくりとのどを鳴らす。
「だけど……彼を、死なせてあげたかった……」
「死なせて…やりたかった…だと?」
「そうよ…」
今にも怒鳴りかねないグレイに、レッドウィングスはもの静かな口調で言い聞かせるように話した。
「……彼は、ブルーアイズは、疲れていた…ひどく、生きることに…。……母親との過去を自分の中で清算することもできずに、ヴァンパイアである自分さえ否定して……だから、彼はあの事件をひとつのけりだと思っていたはず……受け入れてあげたかったの。そんな風に思っている彼の気もちが、痛いほどわかってしまったから……だから、私……」
レッドウィングスの目から涙がこぼれ、その先を話せなくなる。
その手首をつかみ、グレイはぐいっと強い力で自分に引き寄せた。
「……なぜ、おまえが、そんな役を選ばなければならなかった……あいつは、おまえを選ぶことすら、なかったはずだ……」
「そう……そうよ……。あの人が選んだのは、私じゃない……だから、つれに行った、あの娘を……だけど、ルキアには、それを受け入れることはできなかった……」
「だから、おまえがやったというのか……おまえが引導を渡してやったと……」
グレイが片手で手首をつかんだまま、もう一方の手でレッドウィングスの首を抱き寄せる。
「……愛していたの、それほど、彼を……」
呟いたレッドウィングスの唇を奪うと、グレイは荒々しい口づけを与えた。
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