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「オズマ様……」

少女が口づけを迫る。

「……。私を愛していたのか……それほどに」

少女がこくりとうなづく。

「愛しています…オズマ様」

されるがままの私の唇に、少女の唇が触った。

……瞬間、私の中をせき止められない何かが駆け上った。

「あっ……」

少女の体が寝台からころがり落ちた。

手が、血に濡れている。

「殺した……」

魔獣の名残がある私の爪は、伸びるのがとても早い。それは、時に凶器になった。

私は、爪の間にこびりつく血を呆然とながめた。

「ラミア……?」

そっと呼んでみるが、少女の答える気配はなかった。

「おまえを殺すつもりなど、私には……」

寝台を下り、横たわるラミアの体を抱き上げた。

……と、ラミアはわずかに身じろぎ、顔を私に向けた。

「ラミア……」

「オズマ…様……愛して…いま…す…」

少女の瞳が閉じられる。やがて、少女の体は、私の腕の中で形を失い、蜃気楼のように消えてなくなった。

「なぜ…殺されてもなお……」

何もなくなってしまった腕の中にたずねた。

 

ラミア……私も、おまえを、愛していたのに……。

 遙か遠い昔に、一度きり雨宿りに出逢った少女……私は、少女の飾らない美しさに惹かれていた……。舞踏会で私に取り入ってくる女たちはきらびやかで顕示欲ばかりが強くて、好きになることはできなかった。だが、私には王家を継ぐという使命があった……私は、少女への想いは胸に秘めたまま、舞踏会で見初めたある国の姫を王妃として迎える決断をしたのだ……。

……ラミア、私の人間としての最後の記憶の中にいたおまえが、他ならぬ私から人間としての生を奪った張本人だったなど……。

ラミア……おまえに魔力を与えたのは、誰だ……。

おまえを、魔女などに変えたのは、誰なんだ……。

 

ラミア……私を愛してくれて、ありがとう……。

……私も、おまえを、愛している……。

 

  

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