ブルーヴァンパイア]V「磔にされた聖母へ贈るオラトリオ」
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−−枯れ枝で翼を休めていたブルーアイズは、やがて決心をつけたように翼を広げ、枝から飛び上がった。枯れた枝がしなるように大きく揺れ、パシン…と渇いた音をたてて折れ地表へ落下した。
『……おまえは、もうわかっているはずだ……』ブルーアイズは心に響く声に再び胸に手をあてて、「ああ……」とだけ、ひとり短くうなずいた。
暗く灰色にけぶる魔界の空を飛んでいたブルーアイズは、眼下に目指していたものを見つけ舞い降りた。
城にしてはいくぶん小振りで、高く切り立ったような尖塔が目立つことから、細身にも見えるその城の扉の前に立つと、門番が「これはこれはドラキュラ伯爵様、よくいらっしゃいました」と、恭々しく頭を垂れた。
「用があって会いにきた……。今日は……いるのか?」
「はい、いらっしゃいます。では、ただいまご訪問を告げて参りますので、少しお待ちください」
門番をしていた妖魔は程なくして戻ってきて、ブルーアイズを城の中へと案内した。
「……こちらでございます。どうぞ、お入りください」
妖魔はノックをし中を確かめると、ブルーアイズを部屋へ招き入れて姿を消した。
「……レッドウィングス、ふいに訪ねてきてしまってすまない」
ブルーアイズがそう声をかけると、ソファーに足を組んでいたレッドウィングスはくすりと笑った。
「……久しぶりに会ったのに、いきなり謝るの? 相変わらずなのね……ブルーアイズ」
「ああ…いや…」と、ブルーアイズが照れたようにうつむく。レッドウィングスがすっと立ってきて、「ねぇ、たまには久しぶりのあいさつ代わりに、キスでもしてみて?」と、あごに手の甲をあてて上向かせた。
「レッドウィングス……」深く蒼い瞳でじっと見つめると、ブルーアイズは彼女の真紅の唇に口づけた。
「ん…」と、キスをされたレッドウィングスが、自分から言ったにもかかわらず少し驚いた顔でブルーアイズを見やる。
「……らしくないのね? あなたがこんな風にキスをするなんて……。もしかして、私に愛の告白でもしに来たのかしら?」
微笑を浮かべるレッドウィングスに、ブルーアイズは再び口づけて、「……そうだ」と、告げた。
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