ブルーヴァンパイア]V「純潔のマリアに手向ける聖歌」

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父である前ドラキュラ伯爵から命をもらい蘇生したブルーアイズは、長らく魔界での雑事に追われていた。

蘇生を聞きつけ訪れる魔界の住人たちと会い、自ら出かけていって顔見世をしたりとせわしない日々が続いた数ヶ月後、だいぶ訪問客も減り、蘇生の事実も知られるようになって、ようやくブルーアイズは体をあけることができるようになった。

「こんなに……私のことを、思っていてくれたものたちがいるなど……」

寝台に深く腰を埋め、体を気づかう妖魔にすすめられたワインを手に、ブルーアイズはふと呟いた。

血が混じり、赤黒くも見えるワインをためらうことなく口にする。前ドラキュラ伯爵の魂を受け継ぎ結果的に転生を果たしたブルーアイズは、自分でも知らない間にヴァンパイアとしての血が濃くなっていたのだ。

飲み干したグラスに新たにワインをつぎ足そうとした妖魔を断って、ブルーアイズは、「今日は、誰か訪問客はあるのか…?」と、たずねた。

「いいえ。本日ご訪問の方のご予約は入っていません」

首を横に振って答えた妖魔に、「そうか……」とうなづいて、ブルーアイズが気だるげな仕草で寝台から起き上がろうとする。

「伯爵…起きられるのですか?」

妖魔がすかさずブルーアイスの背中に手を添える。

「ああ…少し、会っておきたいものがいる…」

「そうですか…」妖魔はうなづいてブルーアイズが起き上がるのに手を貸したが、「……久しぶりにお暇になられたのだから、休んでいられればいいのに……」と、小さな声で口にした。

「うん…何か言ったか…?」

ふいに顔をじっと見つめられて、「いいえ…」と、妖魔が顔を赤らめて下を向く。

ブルーアイズはその妖魔の髪に軽く触れ、「ワインを…ありがとう。もう、下がってもらってかまわない…」と、グラスを手渡した。

「はい……承知致しました……」

妖魔はかしづき、胸に片手をあてて深く頭をたれると、そのまま姿を消した。

「ルキアに、会いにいかなくてはならない……」

夜着をまとったブルーアイズが窓辺に寄り、呟く。窓から吹き込む風に、薄手の夜着がそよぎ青銀の髪が涼しげに揺らぐ。

「……ルキアは、どうしているだろうか……」

風にあおられて肩口からすべり落ちた夜着を脱ぎ、ブルーアイズは久しぶりに会うルキアに想いを馳せた――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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