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「こんなのって、ありかよ…」
血まみれのファントム・ウルフが脱力したように言う。
「くそ…奴を、止められないなど…」
苦悩に顔を歪め額に手をやる猊下に、「……奴は、俺たちが止めますから……」と、グレイがいたわりの言葉をかける。
「……そう、そんな支配など、何よりも、彼が望んではいないはずだから……」
レッドウィングスが空を見上げる。
「ブルーアイズが、守ってくれる……きっと」
呼応するように、蒼い月が光を放った。
「ブルーアイズが……」
天空の星がきらきらと瞬く。空を零れる涙のように星が流れる。
「ブルーアイズ……! 魔界を救って……!」
月が光を織り蒼いカーテンをつくり出す。そのカーテンがひらけるように、ゆらゆらと揺らめいた。
途端、「ぐあっ……!」と、つぶれるような声が響いた。
「何…をっ……!」
空にふいに赤い血がしみ出し、ぽたぽたと滴り落ちる。
「……裏切ったな! 伯爵……!」
どさりと、空から2つの体が折り重なるように落ちる。
デッドエンドの首に食らいついていたドラキュラ伯爵が顔を上げ、血のついた唇をぬぐう。
「……レッドウィングス………おまえの声が聞こえた……」
伯爵がレッドウィングスの頬に手を触れる。
「……息子にしてやれなかった、全てを……。おまえのためにも、返そう……父としての私の想いの、全てを……」
「戻れ……伯爵の魂よ……」
這いつくばりながらも死力を尽くして魂を呼び戻そうとするデッドエンドに、ドラキュラ伯爵の体から白い光の玉が浮き上がる。
「……この魂は、我が息子ブルーアイズへ……!」
ドラキュラ伯爵から噴き上がるように強い光のオーラが放たれ、一瞬にしてデッドエンドの体が灰と化す。
「レッドウィングス……ブルーアイズを、永遠に、愛してやってくれ……」
噴き上がった光が尾を引いて、空を飛んでいく。
虹のように幾筋もの弧を描いて飛んだ光は、いったん彼方に消え去ると、より大きな光の玉になって舞い戻ってきた。
光が繭のようにほどけ、中から人の姿が現われる。
「……ここは……」
レッドウィングスが口に手をあて、絶句する。
「……なぜ、私は、ここに……」
青銀の髪、蒼い瞳の、最愛のブルーアイズに、レッドウィングスは抱きついた。
「レッドウィングス……私は、どうして……」
「……お父様が、引き換えに命を……」
「父上…が……」
「話してあげる……ゆっくりと。だからもう……どこにも、行ったりしないで……」
レッドウィングスがブルーアイズの唇に心からの口づけを贈った……。
月が2人のシルエットを落とす。
猊下らに見守られ、ブルーアイズは月下に蘇った。
父ドラキュラ伯爵の愛情から生まれ変わったブルーアイズのものがたりは、今ここからまた始まる……。
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