ブルーヴァンパイア]T「眠れる魂を揺り起こす、時の唄」

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「オズマの体は、どこにかくまわれている…」

「知らないよ、そんなこと…」

そっぽを向いてうそぶいた配下のインキュバスの首をつかみ上げて、

「ならば、探してこいっ!」

と、グレイは怒鳴り声をあげた。

「は…はいっ!」

角に蒼い薔薇の巻きついたインキュバスは空中に飛び上がると、あわてて姿を消した。

「ふん…役立たずめっ!」

グレイは飲みかけのワインを取り上げると、中身を飲み干して、そのままぐしゃりとグラスを握りつぶした。

「だが、なぜ俺は……奴の仇を取ろうなどと……」

血だらけの手を目の前にかざし、傷がふさがっていく様をじっとながめながらグレイはふと呟いた。

「殺してやりたいほど奴を憎んでいたからこそ……奴を死なせた輩が許せなかった……それだけだ……それだけのはずだ……」

傷がふさがってしまうと、グレイは舌を出し血を舐め、唇をつけて残った血をすすり上げた。

 

 

「公…、ねぇ…」

ふいに背中からすり寄った影に、グレイは振り向いて、

「貴様っ! 俺の背後にまわるな…!」

と、一喝した。

インキュバスが驚いて首にまわそうとしていた手を引っ込め、体の前でもぞもぞと組み合わせる。

切り出すタイミングを失って、いつまでも上目づかいにじぃっと見上げたままでいるインキュバスに、

「貴様……」

と、グレイは低く言った。

「は…はいっ!」

少年の姿をしたインキュバスがまた怒られるかもと、頭を抱える。

「……怒鳴られたくないのなら、とっとと話すがいい……」

グレイがばかばかしいとばかりに、視線をそらす。

「あ…あの…えっと、オズマの居場所が、わかったんだけど…」

「なに…? もう、わかったのか…あれからまだたいして時間も…」

グレイがそう口にするや、

「そう! すごいでしょ!」

と、インキュバスは誇らしげにしゃべり始めた。

「僕らインキュバスの力を持ってすれば、こんなの簡単! だって、本人の夢の中に入り込めば……」

「黙れ!」

再びグレイの声が飛んで、インキュバスは顔を下に向け黙り込んだ。

「必要以上のことはしゃべるな…わかったな…」

あいかわらず黙ってうつむいているインキュバスのあごをつかんで仰のかせると、

「わかったのか、と、聞いている…」

と、グレイは言った。

「わ…わかりました…すいません!」

びくつくインキュバスにわざと顔を迫らせ、よけいに脅えさせるような真似をして、グレイは言葉を重ねた。

「それで……オズマは、どこにいた?」

「ル…ルキアとかいう元人間の館です…」

「ルキア…だと…」

また、あの小娘か…と、グレイが眉間にしわを寄せる。

「ねぇ…公、あのルキアとかいう娘をヴァンパイアにしたのって、誰? 公?」

「ねぇ? ねぇ?」と、インキュバスがグレイのまわりにまとわりつく。

「うるさい! よけいな口をたたくな!」

再び怒鳴られる羽目になり、インキュバスはキーンと響く耳を両手でおさえた。

 

 

 

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