ブルーヴァンパイア]「蒼い月が爪弾いた悲愴曲」
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魔界に雪が積もったのは、いったいいつのことだったろう……。
窓辺からぼんやりと外をながめていると、久しぶりの魔界の積雪はひどく昔のことだった気がする。
「あの時は、ブルーアイズがそばにいたのに……」
2人で雪を見ていた静かな時間を思い出す。
今はもう雪はどこにも残ってはいなくて、そんな幸せな時間がとうに流れ去ってしまったことを思い知らされる。
「ブルーアイズ……あなたがいない魔界は……」
「ブルーアイズがいない魔界は……?」
軽いノックの音とともに部屋に入ってきた影に、レッドウィングスは顔を向けた。
「あ、グレイ……」
「おまえ…かつての気の強さは、どうしたんだ?」
グレイはレッドウィングスが頬づえをついている窓辺に寄ると、「うん…?」と、顔をのぞき込んだ。
「……あなたこそ、なんだか邪気が削げたような顔……」
「ふん…ごあいさつだな」
「お互いさま…」
2人は顔を見合わせてふっと笑った。
「今日は…なに? あなたがここへ来るなんて…」
「……聞きに来た。奴が死んだ時のことを……」
レッドウィングスが無言でグレイの顔をじっと見上げる。
「なぜ死んだ…奴は。奴を殺したオズマとかいう奴は、誰だ…。なんのために、奴を殺したんだ…」
「たくさん、あるのね……。だけど私も、よくは知らないの…だから、聞きに行ってきた…あの娘のところに」
「あの娘……奴が血の洗礼を授けた、ルキアとかいう人間の小娘か……」
「そう…私より、あの娘の方が知っているから…」
レッドウィングスは頬づえをついた手をずらして、頬をつたった涙をなにげない仕草で隠した。
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